アメリカカンザイシロアリを正しく知ろう!生態や特徴を徹底解説

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2018.08.28 / 更新日 2023.12.27

乾材シロアリ

アメリカカンザイシロアリを正しく知ろう!生態や特徴を徹底解説

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

アメリカカンザイシロアリという近年日本で見かけるようになった外来種のシロアリをご存知でしょうか。アメリカカンザイシロアリは日本に古来からいたシロアリとは全く異なる生態をしており、いままでのシロアリ防除が全く通用しない脅威のシロアリです。

この記事では、アメリカカンザイシロアリの特徴や生態、被害の見つけ方、駆除方法について詳しく解説します。

シロアリ1番!が選ばれる理由

アメリカカンザイシロアリの特徴

アメリカカンザイシロアリの「カンザイ」とは「乾材」のことで、乾燥した気乾状態(含水率10~20%程度)の木材をエサとしていることに由来します。アメリカカンザイシロアリは木材中の僅かな水分で生活する能力に長けており、体内の水分を失わないように排泄物に含まれる水分を直腸でほぼ完全に再吸収することができます。

日本に元々生息するヤマトシロアリやイエシロアリは、水分に依存するため乾燥した木材を好みません。つまり、日本で被害を出すシロアリとは生態的に大きく異なると言えます。

アメリカカンザイシロアリ 木材中に生息し、乾燥した木材を好んで食害します。
ヤマトシロアリ 湿った土中に生息し、地面付近の木材を食害します。
イエシロアリ 湿った土中に生息し、水分を運びながら木材を湿らせて加害します。

 
しかしながら、アメリカカンザイシロアリは湿った床下や腐朽の進んだ壁の中で見つかることもありますし、どんな状態の木材にも被害を及ぼす可能性があるので注意が必要です。

日本の分布状況・生息地

アメリカカンザイシロアリの原産地は北アメリカで、カリフォルニア州からワシントン州にかけての西海岸に広く分布しています。日本では1976年、東京都江戸川区の建物で発見されたのが最初と言われています。家具や荷造材に住み着いていたシロアリが、日本に運ばれて分布を拡げているのです。

アメリカカンザイシロアリの生息域

全国各地で生息が報告されるようになりましたが、その分布は局部的かつ集中的で、同じ市区町村内であっても特定の町内だけに分布しています。ただし、多発する町内では深刻な被害が出ており、今後の被害拡大が懸念されています。

イエシロアリの生息域
ヤマトシロアリの生息域

 
対して日本原産のイエシロアリやヤマトシロアリは分布域が連続しており、点で分布するアメリカカンザイシロアリと比較すると広大な生息地を持ちます。

アメリカカンザイシロアリの仲間の被害が増えている

アメリカカンザイシロアリは乾材シロアリの一種です。乾材シロアリの仲間は他にも日本に生息する種類がいます。

ダイコクシロアリ 沖縄など南西諸島に分布。アメリカカンザイシロアリ同様の被害を引き起こす。
ニシインドカンザイシロアリ 世界的な家屋害虫。関東で散発的な被害が見られる。
シュワルツカンザイシロアリ 南大東島に定着するが、家屋被害はない。

 
ダイコクシロアリは主に沖縄で被害があり、ニシインドカンザイシロアリは関東での被害事例があります。弊社でもニシインドカンザイシロアリの駆除を複数件実施していることからも、今後はアメリカカンザイシロアリ以外の乾材シロアリにも目を向ける必要があります。

ただし、これらと比べてもアメリカカンザイシロアリは日本で最も被害が深刻な乾材シロアリであることに間違いありません。

アメリカカンザイシロアリが脅威と言われる理由

発見や駆除が難しい

アメリカカンザイシロアリが脅威と言われる理由の一つは、その発見や駆除の難しさです。アメリカカンザイシロアリのコロニー当たりの個体数はヤマトシロアリやイエシロアリに比べてとても少ないですが、それ故に初期の段階では被害の発見が大変難しいです。コロニーの創設から被害の発見までに最低でも4~5年かかっているだろうと思われる事例が多くあります。

アメリカカンザイシロアリのコロニー

また、同じ木材の中でもあちこちに巣が細かく別れており、イエシロアリやヤマトシロアリに比べて巣の再生能力も非常に高いことから、たとえ駆除を行っても再び被害がすぐに発生してしまう可能性があります。

隣から飛んで来て繁殖する

日本のシロアリと大きく異なるのは、冒頭にお話したとおり乾燥した木材に営巣する生態です。つまり、隣の家に住み着くアメリカカンザイシロアリの羽アリが飛んで我が家に侵入する危険性があるのです

日本のヤマトシロアリなどは羽アリが生息範囲を広げるために飛んだとしても、そのまま家に営巣することはありません。土に依存する生態を持つためです。しかし、アメリカカンザイシロアリは飛んできた羽アリがオスメスのペアになってしまうと、建物の木材に直接入り込み営巣してしまいます。

▼動画でも説明しています

アメリカカンザイシロアリの見た目の特徴

アメリカカンザイシロアリの階級

アメリカカンザイシロアリは他のシロアリと同じく、王と女王を中心とした様々な階級を持ちます。それぞれの特徴を下表に記載します。

擬職蟻(ぎしょくぎ)
アメリカカンザイシロアリの擬職蟻
体長は5~8mm程度。ヤマトシロアリやイエシロアリと比べ一回り大きいです。若い個体は脱皮後に兵蟻や生殖虫になる可能性があるので擬職蟻と呼ばれます。
兵蟻(へいぎ)
アメリカカンザイシロアリの兵蟻
体長は10mm程度。頭部と顎のみ異常に大きく、褐色なのが特徴です。攻撃性はさほど強くなく、コロニーのために犠牲になるような存在です。大きすぎる顎のため、自分では餌をとることができず、擬職蟻から分け与えてもらいます。
ニンフ
アメリカカンザイシロアリのニンフ
体長は7~8㎜程度。次に脱皮する時は有翅虫になるので小さい翅の様なものが付いています。色は擬職蟻と同様です。
有翅虫(羽アリ)
アメリカカンザイシロアリの有翅虫
体長は7mm程度。翅を入れると10ミリを超えます。全体的に褐色をしています。光の加減では翅が虹色に見えることもあります。※「有翅虫」は、翅(はね)の有る虫の意です。
落翅虫(女王・王)
アメリカカンザイシロアリの落翅虫
体長は7mm程度。一見するとゴキブリの幼虫のようにも見えます。この落翅虫が、女王や王となり、新たなコロニーを作るきっかけになります。

羽アリの見分け方

アメリカカンザイシロアリは在来種のシロアリと同様にコロニー(巣)が成熟して現在の住処では手狭になった場合、新しい住処を探すために一部のシロアリが羽アリに変化して外界に飛び出します。アメリカカンザイシロアリと他のシロアリの羽アリ比較は以下のとおりです。

羽アリの違い

アメリカカンザイシロアリの羽アリの特徴

  • 大きさ:体長7mm程度。翅を入れると10ミリを超える。
  • 色:全体的に赤褐色。光の加減では翅が虹色に見えることも。
  • 形態:4枚の翅が折りたたまれている。形が平べったくスマート。
  • 触角:ヤマトシロアリ、イエシロアリ同様に数珠状。
  • 発生時期:6月~7月の日中に発生。

人為的な被害材の移動などを除くと、アメリカカンザイシロアリの生息域拡大は羽アリによるものです。飛ぶ力は弱く、風に乗って数百メートル飛べる程度ですが、近隣への拡大傾向から日本の在来種よりも生存率が高いと思われます。

発生時期は基本的に温暖な6~7月の日中がメインですが、状況によっては一年中発生する可能性があります。

羽アリは繁殖能力のあるオス(王になる)とメス(女王になる)がいて、巣の外で出会ってつがいになり共同でコロニーを創設します。また、羽アリには新しく住処を探す(コロニーを作る、分布を広げるも同義)という目的の他に、多くなりすぎた個体数を減らす目的があるのではないかという説もあります。

被害の特徴と見つけ方

アメリカカンザイシロアリは、砂粒状の糞を巣の排出口(糞孔)から外部に排出します。この糞がカンザイシロアリの被害発見の手がかりとなります。

糞の特徴

アメリカカンザイシロアリの糞は窓の周囲屋根裏床下軒下家の外周りで見かける事が多く、盛り塩のように積もっていればアメリカカンザイシロアリの糞である可能性を疑いましょう。

アメリカカンザイシロアリの糞が溜まった様子

(写真)押入れ天袋の敷居に堆積した糞。空家にしていると糞が溜まっていても気づくことが難しい。

(写真)基礎通気孔に糞が堆積していた事例。被害エリアでは頻繁に見かける。

 
上写真の茶色い砂粒がアメリカカンザイシロアリの糞です。パッと見ただけではこれがシロアリの糞だとは気づきにくい見た目をしています。糞を拡大すると俵のような形をしており、非常に硬いのが特徴です。

アメリカカンザイシロアリの糞

(写真)様々な色をした糞。俵状で側面に縦筋が入る。
アメリカカンザイシロアリの糞

(写真)堆積した糞の拡大写真。乾燥していて硬いのが特徴。
  • 大きさは0.7~0.9mm程
  • 茶色〜ベージュの色味をしている
  • パラパラと非常に乾燥している
  • とても硬く、爪で圧してもつぶれない
  • 掃除をしてもまた同じ場所に排出される
  • 形が一定で俵状、またはゴマ粒に縦に筋がはいっている

特に一番長い部分が0.7~0.9mm程で俵状という特徴が一致していれば、アメリカカンザイシロアリの可能性が高いです。

アメリカカンザイシロアリの侵入形跡

また、アメリカカンザイシロアリが侵入して間もないうちは糞を出さずに木屑のみを排出しますので、もし木屑が落ちていた場合は周辺に羽の痕跡がないかどうかも確認するようにしましょう。

糞が排出されている「糞孔」の特徴

アメリカカンザイシロアリの糞孔は1ミリ程度の画鋲で穴をあけたようなものから、5ミリ程度で糞などで塗り固めてあるものまで様々です。糞と併せて糞孔も見つけることができれば、その周辺にアメリカカンザイシロアリが生息していることはほぼ確実です。

小さな排出口

(写真)画鋲の穴のような糞孔。よく見ると奥に糞が詰まっている。
糞が詰まった排出口

(写真)釘穴が糞孔として再利用された例。糞が固められている。

 
とはいえ糞孔は注意してみないと専門家でも見落としが出るくらい見つけにくく、初めてみた人は「画鋲の穴ではないんですか?」と感じるかも知れません。

比較的大きな糞孔であれば糞や構造物、周辺の状況などから判断することができますが、小さな糞孔を判断するにはある程度の経験が必要です。画鋲と糞孔の違いは、穴の縁がキレイに切り取られていればアメリカカンザイシロアリの糞孔、穴の縁が押し込まれて丸みを帯びていれば画鋲の穴です。

被害材の特徴

アメリカカンザイシロアリの被害材は、他のシロアリと同様に木材の内部を食べ進める特徴を持ちます。そのため木材の表面には被害の痕跡が見つかりにくく被害が大きくなってしまいがちです。

(写真)被害家屋の柱の断面図。内部がスカスカに食べられている。

(写真)弊社研究室での試験材料。外からでは被害の大きさがわからない。
アメリカカンザイシロアリの被害

(写真)甚大な被害現場の被害柱。少なくとも10年以上が経過したと考えられる。
被害材の中から出てくるアメリカカンザイシロアリ

(写真)解体現場の柱を切断したところ働きアリが大量に出てきた。

 
近年の住宅は大壁造りが主流となり、柱などの木材が見えづらくなっています。弊社でアメリカカンザイシロアリの調査を実施しても、目に見える被害のほとんどは和室や窓枠、屋根裏といった木材が露出したエリアです

つまり、大壁造りの住宅では糞孔が壁内にできてしまい、被害の発見が遅れてしまう可能性が指摘されています。

アメリカカンザイシロアリ被害の割合

NHKのクローズアップ現代やワイドショーでも取り上げられるアメリカカンザイシロアリですが、被害の実態はあまり知られていません。報道の内容によっては日本中で猛威をふるっているイメージを抱くかもしれませんが、実はそうとも限りません。

シロアリ被害の割合

上グラフは国土交通省の補助事業として行われたシロアリ被害実態調査報告書で示された日本全国の被害割合です。日本のシロアリ被害の99%以上がヤマトシロアリやイエシロアリの被害で、アメリカカンザイシロアリの被害はわずか0.3%に過ぎないことが分かっています。

シロアリ被害の割合

また、弊社が2018年から2022年に実施した調査の割合が上グラフです。弊社の営業エリアが関東のため全国平均より乾材シロアリの割合が増えていますが、他のシロアリと比較して非常に少ないことが分かります。(※弊社は乾材シロアリの対応実績が東京エリアだけで400件以上ございます)

アメリカカンザイシロアリの駆除方法

アメリカカンザイシロアリの駆除方法として、大まかに液剤(ムース状薬剤)による穿孔注入処理と毒ガスによる燻蒸処理の2種類があります。それぞれの特徴についてメリット・デメリットを挙げながら詳しく解説をしていきます。

液剤(ムース状薬剤)による穿孔注入処理

日本及び海外で最も一般的に行われているのが、被害個所及び被害個所と思われる部分にムース状の薬剤を注入して駆除する方法です。ムース状薬剤による駆除の基本的な流れは下記のとおりです。

  1. 被害箇所を特定し、どこまで被害が伸びているかを想定する
  2. 被害箇所にムース状薬剤を加圧注入する
  3. ムース状薬剤が他の穴から吹き出すまで虫孔内に行き渡らせる
  4. 注入穴を塞ぐ

これらの方法も現状では業者間でかなりの違いがあります。例えば、侵入から現加害箇所までの経路を想定し、できるだけ少量の薬剤をピンポイントで処理する業者もいれば、被害の及ばないところまでやみくもに穿孔し、その後屋根裏や壁内に大量噴霧する業者もいます。

これらの違いはやはり経験によるものであると思われますが、薬剤を使用する以上できるだけ使用量を抑え、お客様の健康や地域環境、建物のことを考えたアドバイスや提案をしてくれる業者を選ぶことが賢明と言えます。

実績のある薬剤 クロチアニジン、クロルフェナピル、イミダクロプリド、チアメトキサム、ホウ酸塩等

 
弊社が使用する薬剤は、公益社団法人日本しろあり対策協会が認定したものです。現在、乾材シロアリ用駆除薬剤として認定されたものは8種類登録されています。

また、近年使用され始めたホウ酸塩は日本しろあり対策協会で認定された薬剤がありません。ホウ酸塩自体はアメリカカンザイシロアリの駆除効果がある薬剤ですが、半永久的に分解されず(第一種指定化学物質、第二種特定有害物質に指定)、環境への負荷が懸念されるため弊社では推奨しておりません。

穿孔注入処理のメリット 穿孔注入処理のデメリット
費用が安い
残留効果が期待できる
国内、海外での実績がある
完全な駆除が難しい
業者間で施工品質にばらつきがある
国内に経験の多い業者が少ない

毒ガスによる燻蒸処理

アメリカでは、薬剤による駆除処理よりも毒ガスによる燻蒸処理が一般的です。 建物をビニールシートですっぽりと覆ってしまい、その中に毒ガスを入れてすべての生物を殺すことができるため、効果は非常に高い方法と言えます。

日本でも文化財や古文書の保管庫などの害虫を駆除する場合に採用されますが、費用の面や日本の住宅事情を考えると現実的な工法ではありません。また、毒ガスは残留効果がありませんので再侵入される恐れもあります。
※当社では燻蒸処理に対応しておりません

燻蒸処理のメリット 燻蒸処理のデメリット
建物内全てのカンザイシロアリを駆除できる
アメリカでは実績がある
費用が高い(国内で施工すると百万円以上)
近隣許可が難しく住宅地では施工不可
上記に関連して日本では実績があまりない
残留効果がないので予防にならない

アメリカカンザイシロアリの疑いがあるときは

現在、アメリカカンザイシロアリの被害は局所的で、日本では珍しい種類のシロアリです。しかしながら、家屋への侵入方法が日本固有種であるヤマトシロアリなどと全く異なり、建物のどこからでも侵入されてしまう怖さや万が一被害に遭ってしまった際の駆除の難しさがあります。

  • 粒状の固い糞のようなものが溜まっている
  • 6~7月に赤黒い羽アリが出てきた
  • 輸入家具から粉が出る

 
このような異常があれば、専門の業者に調査を依頼されることをおすすめします。シロアリ1番!でもアメリカカンザイシロアリの駆除を取り扱っていますので、「アメリカカンザイシロアリかもしれないので一度様子を見て欲しい」という方はお気軽にご相談ください。

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「クリーンなイメージとしてのシロアリ防除業界のパイオニアであり続ける」。私たちシロアリ1番!は、安心で確実なシロアリ駆除・予防をご提供するため、お客様のことを第一に考えたサービス作りをします。点検・工事・お見積りのことなど、シロアリ対策でお困りの点がありましたらお気軽にご相談ください。

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